成長の熱を、ひとつに束ねる場所へ丨ライフドリンク カンパニー 大阪オフィス移転が描いた、次のステージ
急成長している会社には、独特の熱があります。
前向きで、スピードがあり、次の課題が次々と立ち上がる。その熱が強くなるほど、「働く場」は単なる器ではなく、組織の推進力そのものになっていきます。
株式会社ライフドリンク カンパニーが取り組んだ大阪オフィスの移転は、まさにその転換点に位置するプロジェクトでした。
社員数の増加や働き方の多様化が進む中で、これまでの延長線上ではなく、これからの成長を受け止める場をどうつくるのか。同社はその問いに対し、移転という選択を通じて、丁寧に向き合っています。
本記事では、人財本部 総務部 部長の慎 勲宰様、ならびに移転プロジェクトメンバーである小野寺 志津香様、柘植 紀衣様の言葉をもとに、大阪オフィス移転の背景やプロジェクトの進め方、空間づくりに込めた考え方をひもといていきます。
完成をゴールとするのではなく、組織の関係性や文化を育て続けていくための「起点」として位置づけられた今回の移転。そのプロセスから、成長企業がオフィスに何を託そうとしているのかを探ります。
人が増えたからではなく、「一緒に進む力」を強くするために
移転を検討し始めた「最初のきっかけ」は何でしたか?
慎様:一番分かりやすいきっかけは、席数や空間に余裕がなくなってきたことでした。採用が順調に進み、社員数が100名を超える中で、これまでのオフィスの使い方では対応しきれなくなってきた感覚がありました。
商品を扱う事業特性上、どうしても物を置く必要がありますが、収納には限界があり、置きたいものが置けない状態が続いていました。
成長に合わせて、6名席を8名席に変更したり、執務室として使っていなかったスペースを転用したりと、できる工夫はすべてやってきたと思います。「なんとか回す」こと自体はできていましたが、それはあくまで応急対応でした。
席数が足りず、空間としての余白がなくなっていく中で、このままでは今後の成長を受け止めきれない、という感覚が次第に強くなっていきました。
社員数は2024年で約100名、2026年には130名規模になります。この成長を前向きに受け止めるためには、まず働く場としての“器”を整える必要がある。そう判断したことが、移転を検討し始めた最初のきっかけでした。
そうした環境の中で、どのような課題が生まれていましたか?
小野寺様:ハード面の制約が続く中で、次第に人や働き方にも影響が出てきていると感じていました。
席数に余裕がないことで、リモートを選ぶ場面が増え、オフィスに出社しても「固定席で業務をするだけ」という使われ方になりがちだったと思います。結果として、部署やチームを越えた関わりが生まれにくくなり、日常的な会話や情報共有のきっかけが減っていきました。
オフィスに人はいるけれど、組織としての一体感やつながりを実感しづらい。人が増えるスピードに対して、関係性の構築が追いついていない感覚もあり、顔と名前が一致しにくくなっていたのも正直なところです。
働き方を選びながら業務は進められていましたが、その一方で、「オフィスに来ることで得られる価値」が見えにくくなっていた。出社すること自体が、前向きな選択というよりも、数ある選択肢の一つになってしまっていたように思います。
こうした状態が続くことは、成長フェーズの会社にとって望ましいものではありません。
人と人が自然につながり、同じ方向を向いて働ける環境を取り戻す必要がある。そうしたソフト面の課題意識が、今回の移転を後押しする大きな理由の一つでした。
働き方が多様化したからこそ、オフィスに求めた“ハブ”の役割
会社が成長していく中で、働き方や組織のつながりにどのような変化を感じていましたか?
慎様:コロナ禍をきっかけに、リモートワークやオンライン中心の働き方が一気に進みました。インターネットFAXなども導入し、当時は「ほとんど出社しなくても仕事が回る」状態をつくれていたと思います。
入社したタイミングがコロナ禍だった社員も多く、オンラインでのやり取りは自然なものになっていきました。
一方で、関係性が十分にできあがっていない状態でこうした働き方が定着したチームでは、別の難しさも感じるようになりました。
声をかけるきっかけがつかみにくい。誰が何を得意としているのかが見えづらい。顔と名前が結びつくまでに時間がかかる。
これは誰かの意識や姿勢の問題ではなく、働き方が変化したことによる自然な副作用だったと思います。
そうした変化を踏まえ、新オフィスにはどんな役割を持たせたかったのでしょうか?
柘植様:移転を考え始めた段階で明確だったのは、「全員が常に集まる場所」をつくりたいわけではない、ということでした。出張も多く、リモートが前提となる業務もある中で、出社を義務づけるようなオフィスは現実的ではありません。
一方で、成長とともに、人と人との距離が少しずつ広がっている感覚もありました。
部署を越えた接点が生まれにくくなり、偶然の会話や気軽な相談が減っていく。そうした状態が続くと、組織として同じ方向を向いている実感を持ちにくくなってしまいます。
だからこそ、新しいオフィスには、「集まったときに自然とつながれる場所」であることを求めていました。意図的に何かを仕掛けなくても、顔を合わせ、会話が生まれ、相互理解が進んでいく。その起点になる空間です。
執務スペースだけで業務を完結させるのではなく、人と人が交わる余白をあらかじめ空間の中に組み込むこと。
無理に集めるのではなく、集まった瞬間に価値が生まれる。
それが、移転前の段階でオフィスに最も強く求めていた役割でした。
全社を巻き込み、考え抜く。選抜メンバーで進めた移転プロジェクト
移転プロジェクトはどのような体制で進められましたか?
慎様:今回は最初から、「移転は一部の部署だけで進めるものではない」と決めていました。そこで、各部署からメンバーを選抜し、全社横断の移転プロジェクトを立ち上げました。最終的には11名体制となり、キックオフ以降は隔週ペースで定例を回し、時間をかけて意思決定を積み重ねていきました。
特徴的だったのは、最初から役割や結論を固めなかったことです。各部署にはそれぞれ事情があり、どうしても譲れない条件もあります。
一度持ち帰って整理し、また持ち寄る。その中で「自部署の最適」ではなく、「会社全体としての最適解は何か」を探り続けました。
その過程で自然と共有されていったのが、「譲り合いながら決める」という姿勢です。誰か一人の意見を通すのではなく、会社として納得できる形を選ぶ。そのスタンスは、プロジェクトの最初から最後まで一貫していたと思います。
プロジェクトで特に大変だった点と、こだわった点を教えてください。
慎様:一番大変だったのは、席数・予算・収納のバランスです。
良くしようとすればするほど、予算は膨らみます。実際、進める中で「これは予算オーバーしているな」と分かった場面もありました。ただ、そこで安易に削る選択はしませんでした。
「なぜそれが必要なのか」「会社としてそれは正しいのか」を一つひとつ言語化し、納得感を持って決めることを大切にしました。時間はかかりましたが、その分、徹底的に計画された移転になったと思います。
このプロジェクトは、オフィスをつくるだけでなく、メンバー自身が考え、悩み、やり切る経験にもなりました。移転を乗り越えたことで、私自身も、プロジェクトメンバーみんなも一段成長できたと感じています。
物件選定と空間設計に込めた「前を向ける理由」
大阪梅田ツインタワーズ・サウスを内覧した際、第一印象はどのようなものでしたか?
小野寺様:内覧したときに、まず「開放感がある」と感じました。大きな窓から光が入り、大阪の街を一望できる。その瞬間に、ここで働く自分たちの姿が自然とイメージできたんです。
会社のフェーズが変わるタイミングでは、空間が人に与える心理的な影響はとても大きいと思っています。成長していく中で、前向きな気持ちで仕事に向き合えるかどうかは、環境に左右される部分も大きい。
この場所なら、これからのライフドリンク カンパニーにふさわしい空気感をつくれる。そう直感的に感じられたことが、最終的な決め手でした。
また、専有部だけでなく、ビル全体としての設えにも可能性を感じました。オフィスの中だけで完結させるのではなく、人が自然に集まり、関係性が育つ余白が、建物そのものに用意されている。
移転前に思い描いていた「集まったときに価値が生まれる場所」というイメージに、現実味を持たせてくれた内覧だったと思います。
空間設計で特に意識したポイントを教えてください。
柘植様:一番意識したのは、偶発的なコミュニケーションが生まれることです。
会話を「わざわざ時間を取ってするもの」にしたくありませんでした。日常の延長線上で、自然と声をかけ合える。そんな状態を、空間でつくりたいと考えていました。
そのために、導線を工夫し、リフレッシュエリアを2か所設けています。
コーヒーを飲むついでに立ち話ができる場所や、スタンディングで打ち合わせができるテーブルを用意することで、「少し話す」「ちょっと相談する」ことのハードルを下げました。
さらに、オフィスの外にある共用部――12階のWELLCOの存在も、この考え方と非常に相性が良いと感じています。歓迎ランチやちょっとした雑談など、業務から少し離れたコミュニケーションが生まれる場として、自然に使われています。
執務空間とリフレッシュ空間の間、「リラックスしながら業務相談できる空間」を設けたことで、オンとオフの“間”が生まれ、人との関係性に広がりが出てきました。
デザインも、あえて尖らせすぎず、ナチュラルで温かみのあるものにしています。おしゃれさや機能性を前に出すのではなく、「話し合ってなんぼ」という会社のカルチャーを、空間がやさしく支える存在であってほしい。
そのための余白や温度感を、細部まで意識しながら設計しました。
「なんとなくで選んだものがない」──会社らしさを、空間に刻んだ移転
今回の移転を一言でまとめると、どんな意味を持つ出来事でしたか?
小野寺様:最初は、会社が成長していく中で必要な場所を確保する、というごく実務的なところからスタートしました。ただ、プロジェクトを進めるうちに、次第に意味合いが変わっていったんです。
この移転は、単にオフィスを新しくすることではなく、会社らしさや会社のマインドを、もう一度見つめ直し、それを空間として表現していく時間だったと感じています。
自分たちの強みは何なのか。これからどう勝っていくのか。
その答えを言葉だけでなく、形として残したいという意識が、プロジェクト全体を通して共有されていました。だからこそ、一つひとつの選択に意味を持たせ、「なんとなくで決めたものがない」状態を大切にしてきました。その積み重ねが、今のオフィスにつながっています。
もちろん、まだ完成形ではありません。新しいものとこれまで積み上げてきたものが混ざり合い、次の形へと変わっていく。その土台ができた、という感覚が近いと思います。
代表がよく口にする「場所が変われば、人は変わる」という言葉がありますが、この移転はまさに、人が変わるためのきっかけを、会社として本気で用意した出来事だったと感じています。
新オフィスを活用して、今後どんな働き方や取り組みを実現したいですか?
慎様:目指しているのは、「働きやすい」だけで終わらないオフィスです。
もちろん快適さは大切ですが、それ以上に大事にしたいのは、働きがいを感じられる場所であることだと思っています。
成長の機会があり、正しく評価され、人とのつながりの中で力を発揮できる。その循環が自然に生まれる状態を、このオフィスを中心につくっていきたい。これからさらに多様な人が集まる組織になっていくからこそ、前向きな関わりが生まれる“余白”や“仕掛け”を、意図的に増やしていく必要があると感じています。
このオフィスも、完成した瞬間がゴールではありません。
まだ注目され始めたフェーズだからこそ、使いながら磨き、変え、育てていく。そのプロセス自体を楽しみながら、次の成長につなげていきたいと思っています。
この場所が、挑戦する人の背中を自然と押す存在であり続けてほしい──そんな想いを込めています。
※掲載内容は取材当時のものです。




