【セッションレポート|阪急阪神のオフィスサミット2025】防災備蓄管理の実例ご紹介と、ノンコア業務である備蓄管理業務の在り方について
2025年11月5日・6日の2日間にわたり、大阪梅田ツインタワーズ・サウスにて「阪急阪神のオフィスサミット2025」が開催されました。本サミットは、“働く場の価値を再定義する” をテーマに、企業の人的資本経営、働き方、ワークプレイス戦略、コミュニティ形成、災害対策、大学との連携など、オフィスにまつわる幅広いテーマを扱ったイベントです。会場には多様な業種のワーカーや企業担当者が集まり、講演・見学ツアー・交流会を通じて、これからのオフィスが果たす役割について活発な議論が行われました。
本記事では、サミット当日の各セッション内容を、講演の背景・主張・示唆を中心にレポートとしてまとめています。阪急阪神ビルマネジメントが考える“働く場の価値づくり”の視点とともに、参加者にとって印象的であったポイントを紐解いていきます。
■ SESSION INFORMATION | セッション⑤
- 【開催日】
- 2025年11月5日
- 【登壇者】
- Laspy株式会社
代表取締役 藪原 拓人 氏 - 【テーマ】
- 防災備蓄管理の実例ご紹介と、ノンコア業務である備蓄管理業務の在り方について
「備蓄管理が本業ではない」企業ほど深刻な課題を抱える
セッションの冒頭、藪原氏は現状の防災備蓄管理について「実務の現場では、多くの企業が“やらなければいけないと分かっているのに、適切に管理できていない”状態にある」と指摘しました。
備蓄品は買って終わりではなく、賞味期限の管理・保管スペース・更新タイミングなど、継続的なメンテナンスが不可欠です。しかし、それを担う総務・管理部門に十分な時間はなく、“ノンコア業務”として後回しになりやすいという構造的課題を抱えています。
多くの企業で陥りがちな問題として、次のような実例が紹介されました。
- 管理台帳が複数のExcelで散在しており、更新履歴が追えない
- 担当者変更のタイミングで情報が引き継がれず、棚卸がゼロからやり直しになる
- 実際に災害が起きた際、備蓄品の場所や数量が把握できない
- 「何を、どれだけ備えるべきか」の基準が曖昧なまま購買が行われている
藪原氏は「これらは企業の怠慢ではなく、備蓄管理の仕組みがそもそも組織にフィットしていないことが原因である」と理解を促し、問題の本質を“構造的な属人化”と整理しました。
防災リスクが高まる日本。備蓄は“義務”から“人的資本の一部”へ
講演では、近年の災害動向にも触れられました。大地震、風水害、停電リスクなど、企業活動を止めかねない事象は増加しています。
特に首都圏については、長周期地震、液状化、広域停電など「復旧までの時間が長期化する可能性」が強調され、事業継続性(BCP)における“備蓄の重要度”が再認識されています。
さらに、近年注目される人的資本経営の観点からも、従業員の安全確保・生活支援は企業の責務と位置づけられるようになっています。
藪原氏は「従業員の命と生活を守るための備蓄は、今や“福利厚生”ではなく“人的資本投資”である」と述べ、備蓄の価値が変化していることを示しました。
Laspyが行う“備蓄マネジメント”の全体像
セッションの中盤では、登壇企業 Laspy が行う備蓄管理サービスの実例が解説されました。同サービスの特徴は大きく3つに整理されます。
① 現状の棚卸と最適化設計
備蓄品の数量・種類・保管場所をすべて可視化し、適正量を設計します。
企業の業態、オフィス面積、従業員数、帰宅困難者想定など、複数項目をもとに“備えるべき量”を算出。
棚卸データは数値化され、更新の負荷を最小限に抑えられる状態へと整えられます。
② 賞味期限・更新サイクルの自動管理
資料に掲載された管理画面でも示されていたように、賞味期限・消費期限をシステムで自動追跡し、更新時期に通知される仕組みが導入されています。
従来は総務担当者の“気づき”に依存していた更新作業が、システム主体の運用へと移行することで、属人化が解消される点が強調されました。
③ 保管方法・運搬動線まで含めたトータル設計
備蓄品の配置は「量」だけでなく「取り出しやすさ」「動線」「災害時のオペレーション」を含めて設計されます。
資料の事例写真では、防災ラックの導入や整理された棚の配置が示され、オフィスの制約に応じた最適化が実施される様子が具体的に紹介されました。
これら一連のマネジメントがセットで提供されることで、「備蓄管理」というノンコア業務をアウトソースし、企業は本来注力すべき業務へ集中できるようになります。
企業が抱える“心理的なハードル”をどう越えるか
藪原氏は、備蓄管理が進まない理由として「必要性は分かっているのに、最初の一歩が踏み出せない」という心理的障壁を指摘しました。
- 何から始めるべきか分からない
- いまの備蓄量が適正か分からない
- 予算が読みづらい
- 担当者に裁量がない
Laspyでは、こうした企業の悩みに対し、まずは“可視化と相談”から始めるサポート体制を整えており、「最初の壁」を越える設計が重視されています。
導入企業の例として、上場企業、外資系企業、行政施設など幅広い組織が挙げられ、業種を問わず課題が共通することが示されました。
まとめ
今回のセッションを通して浮かび上がったのは、防災備蓄が「買って終わり」ではなく、「管理し続けることで価値が生まれる領域」であるという点です。
災害リスクが高まる中、従業員の命と生活を守る体制は、企業のレジリエンスだけでなく、人材への安心感や信頼にも直結します。
また、備蓄管理の実務はノンコアでありながら、総務部門の負荷を大きく左右する業務でもあります。藪原氏が語った「仕組みで解決する」という姿勢は、多くの参加者に共通する課題意識を刺激しました。
備蓄は“義務”ではなく、人的資本を守るための“戦略的な投資”。
その管理をいかに効率化し、継続可能な運用フローへと変えていくか──
それがオフィスのあり方を問う本サミットにふさわしい示唆となったセッションでした。
※掲載内容は取材当時のものです。




