コラム

セミナーレポート|グローバルとローカルから読み解くオフィス戦略の現在地

2025年オフィストレンドセミナー(大阪梅田)開催報告

2025年8月7日、大阪梅田ツインタワーズ・サウスにて、コリアーズ・インターナショナル・ジャパン株式会社、阪急阪神不動産株式会社、阪急阪神ビルマネジメント株式会社の3社共催による「オフィストレンドセミナー」が開催されました。

本セミナーでは、世界および日本のオフィスマーケットの最新動向と、大阪梅田というエリアのポテンシャルについて、豊富なデータと事例を通じて解説が行われました。

第一部:グローバル視点から見る日本のオフィス市場のトレンド

登壇者:コリアーズ・インターナショナル・ジャパン株式会社 川井 康平 氏(シニアディレクター)

冒頭では、2025年上半期のアジア太平洋地域におけるオフィスマーケットの概況が紹介されました。アジア太平洋地域のオフィス市場は順調に回復しており、日本はインド・中国と並び、取引規模・リース面積ともにアジアを代表する主要市場と位置づけられています。

アジア太平洋のオフィス市場、需要回復と主要トレンド

中でも東京と大阪は、空室率の低下と賃料の上昇が同時に進む、アジア全体でも数少ない「成長市場」となっています。東京のグレードAオフィス平均賃料は33,300円/坪(前年比12%上昇)、空室率は2.1%(前年比1.4ポイント低下)。大阪では18,200円/坪(前年比11%上昇)、空室率3.3%(前年比0.2ポイント低下)と、いずれも一段と需給が引き締まる市況が続いています。

日本だけが賃料上昇・空室率低下。アジアオフィス市場の現状比較。

このような動向の背景には、テナント企業によるオフィス需要の“質への逃避(Flight to Quality)”があります。オフィスの立地、ビルグレード、ESG要素、設備の柔軟性など、働く環境そのものへの要求水準が世界的に高まっています。

「質への逃避」オフィス戦略。立地・建物・高コスパでの各国動向。

また、こうした質重視の傾向は、日本特有の背景とも結びついています。日本では、全体として好調な業績に支えられて、企業は採用活動を加速しており、人員の増加を見据えたオフィスの拡張と同時に、人材の採用に有利な通勤利便性の高い立地への移転ニーズが需要を牽引しています。一方で、少子高齢化の加速に伴い、人材獲得競争が激化しており、企業の採用計画の実現には一定の不確実性が伴う点を踏まえ、長期的には柔軟性を含んだ戦略設計が求められるとの指摘もありました。

川井氏は講演の最後に、「テナントにとって“選ばれるビル”とは、設備だけでなく、人材戦略や企業ブランディングと結びついた戦略拠点である」とまとめ、オフィスを“経費”ではなく“経営資源”として捉える視点の重要性を強調しました。

第二部:大阪梅田の真価と企業価値を高めるオフィス戦略

登壇者:阪急阪神ビルマネジメント株式会社 近藤 駿 氏(オフィス営業部マネジャー)

続く第二部では、地元・大阪梅田をテーマに、立地選定が企業や従業員にどのような影響を与えるのかを掘り下げた講演が行われました。

大阪梅田は、JR・私鉄・地下鉄の7駅が交わる西日本最大のターミナルエリアであり、近年では大型再開発の進行により、大阪市内最大のオフィス供給エリアとしての存在感を高めています。2025年7月時点の空室率は3.34%と低水準を維持しており、安定的な需要に支えられた市場であることが数字からも明らかです。

大阪梅田、2012年比でオフィス供給が拡大し、高稼働を維持。

近藤氏は、大阪梅田の強みを「ハード」と「ソフト」の両面から説明しました。ハード面では交通利便性に加え、商業施設・飲食店・医療機関などが集積しており、生活機能の充実度が高いこと。ソフト面では、オフィスワーカーや大学生を対象とした調査で、「最も働いてみたい街」として梅田が他エリアを大きく上回ったことが紹介されました。

大学生が働きたい街、梅田が約半数の支持でNo.1。

また、2024年度の成約実績では、48%が館内増床、52%が館外からの新規移転で、移転理由の大半は「拡張」「グレードアップ」「立地改善」。縮小目的はわずか1件のみという結果も示されました。

オフィス選定において「立地」は最重要要素とされ、次いで「建物の新しさ」「安全性」「設備の快適性」が評価されています。さらに、大学生を対象とした調査でも、企業選びにおける「勤務地」の優先度が非常に高く、立地が企業の採用競争力に直結していることが裏付けられました。

講演の最後には、「オフィスは“企業文化の表現装置”である」との見解が述べられ、企業が外部・内部に対して何を重視するのかを具現化する場として、立地と空間の重要性が再確認されました。

第三部:WELLCO見学ツアー ― オフィスの共用空間が果たす役割

WELLCOの快適なラウンジと落ち着いたカフェ空間。

セミナー終了後には、会場同ビル12階に設けられた共用スペース「WELLCO(ウェルコ)」の見学ツアーが実施されました。

WELLCOは、大阪梅田ツインタワーズ・サウスに入居するオフィスワーカー専用の空間で、カフェやラウンジ、フィットネスエリア、リフレッシュルーム(仮眠室)などを備えた多機能な施設です。

この空間は、個人作業やオンライン会議、カジュアルな打ち合わせだけでなく、リフレッシュや休息といった心身のケアも目的とした設計となっており、働く人のQOL向上を多方面から支援しています。

また、阪急阪神グループが展開する「阪急阪神ワーカーズサービス」では、“働くを面白くする”というコンセプトのもと、イベントなどの体験型サービスや各種優待サービスが提供されています。体験型サービスでは、「いきるチカラ」「はたらくチカラ」「たのしむチカラ」の3カテゴリで、ライブ・エンタテイメント、セミナーやワークショップ、サークル活動などが行われており、ビルの垣根を越えたコミュニティ形成も促進されています。優待サービスでは、阪急阪神グループが運営する商業施設の約400店舗で利用可能な「阪急阪神おでかけカード(ワーカー専用)」により、梅田地区とその周辺エリアを含む様々な付加価値の提供が進んでいる点も特徴のひとつです。

総括:“働く場所”が企業戦略をかたちづくる時代へ

本セミナーを通じて明らかになったのは、オフィスという空間がもはや“作業の場”ではなく、企業の成長や人材戦略を左右する「戦略資産」となっている現実です。グローバルな市場動向では「質」への移行が進み、ローカルでは“大阪梅田”という都市の競争力が、定量・定性の両面から証明されました。

企業が“どこで働くか”を選ぶことは、単なる住所の選定ではなく、事業の方向性や企業文化の発信、採用ブランディングの強化など、多様な意義を内包しています。今後、立地・空間・サービスが一体となった「オフィスのあり方」が、経営における差別化要因としてより一層重要視されていくことが予想されます。

大阪梅田は、そうした変化の最前線で“選ばれる街”としての地位を確立しつつあり、企業にとっての新たな価値創出の舞台となっています。

なお、今回のセミナーはアーカイブ配信でこちらのYouTubeチャンネルからご視聴いただけます。興味をお持ちいただけたらぜひご覧ください。