コラム

オフィス移転から始めるサステナブル経営:再生可能エネルギー導入ビルが選ばれる理由とは?

持続可能な社会の実現に向け、ESG経営やサステナビリティ対応の必要性は多くの企業で意識されるようになってきました。しかし、『何から着手すべきか』『実際に収益にどう影響するのか』といった企業担当者や経営者層からの実務的な課題感を抱える声も少なくありません。

ESG経営とは

ESG経営は、企業が環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を経営戦略に組み込むことで、持続可能な成長を目指す経営手法です。

なかでも、再生可能エネルギーの導入について、以前は“コスト増の割に効果が見えにくい”と捉えられていました。しかし近年、電力価格の高騰や情報開示の義務化を背景に、企業価値の向上やリスク対策に直結する施策として見直されつつあります。

とくに注目されているのが、『再生可能エネルギー由来の電力を利用するオフィスビルへの入居』です。日々の事業活動で排出するCO₂を実質的に削減できると同時に、環境への取り組みを外部に対してわかりやすく「見える化」する手段にもなります。本記事では、なぜ今この選択が経営判断として有効なのか、また入居によって得られるメリットを具体的に解説していきます。

まずは再生可能エネルギーがこれほど重要視される背景を整理していきましょう。

再生可能エネルギー導入ビルが注目される背景とは?

都市の高層ビル群を背景に、緑の植栽上に並ぶ太陽光パネル

再生可能エネルギー導入ビルが注目されている背景には、「脱炭素社会への移行」という世界的な潮流と、それに伴うESG対応の重要性の高まりがあります。ESGはもはや一部の大企業や行政だけでなく、中堅・中小企業を含めたあらゆる事業者にとって、事業継続の前提条件となりつつあると言えるでしょう。

こうした時代の変化のなかで、なぜ「再生可能エネルギー導入ビル」という選択肢が戦略的に選ばれているのか――その背景を理解するために、社会全体の動きを整理していきます。

脱炭素社会の到来で変わる、企業経営の在り方

2030年および2050年のカーボンニュートラル目標に向け、脱炭素への取り組みは世界的に加速しています。日本においても、2023年3月期決算企業から、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示が義務化されました。さらに、2027年3月期からは、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が策定する新たな開示基準の適用が段階的に義務付けられる予定です。

カーボンニュートラルに向けた日本の動向を示す年次ロードマップ(2023年から2050年)

これらの動きは、企業の「取引継続条件」や「資金調達の可否」、さらには「リクルーティング活動」にまで影響を及ぼしています。

環境対応はもはや“余裕があれば行う”ものではなく、“対応しなければ事業継続が危うくなる”リスク要因へと変わりつつあり、脱炭素社会の進展は、企業経営の在り方そのものを見直すきっかけとなっています。

再生可能エネルギー導入は「コスト」から「企業価値向上の投資」へ

2020年頃までは、再生可能エネルギーの導入は「コスト負担が大きく、経営効果が見えづらい」という認識が一般的で、一部の先進的な企業が取り組むイメージにとどまっていました。

しかし近年では、政府による補助金制度の拡充により、初期導入のコスト負担は確実に軽減されつつあり、導入を後押しする制度的な土壌が整ってきました。加えて、トラッキング付非化石証書*¹ 市場の整備が進んだことで、環境対応の成果が“見える化”され、ESG評価やIR資料としての活用がしやすくなっています。

さらに、エネルギー価格の不安定化が続くなかで、再生可能エネルギーを活用した電力調達は中長期的なリスクヘッジ手段としても注目されています。

このように、再生可能エネルギーの導入はもはやCSR目的の取り組みではなく、財務面や企業ブランドに直接プラスをもたらす「企業価値向上のための投資」へと進化しています。今や再生可能エネルギーの導入は“意識の高い取り組み”ではなく、“競争力を高める戦略的な選択”として企業の意思決定に組み込まれ始めています。

*¹ 非化石電源(再生可能エネルギー等)由来の電気が有する「環境価値」が証書化され、加えて発電所の所在地等の属性情報(トラッキング情報)が付与されたもの

なぜ「再生可能エネルギー導入ビル」への入居が有効なのか?

高層オフィスビル外観写真

再生可能エネルギー導入が企業価値を高める投資となるなかで、実際に企業はどこから行動を始めればよいのでしょうか。数ある取り組みのなかでも、意外に見落とされがちなのが「入居するオフィスビルの選定」です。特に移転や契約更新のタイミングは、環境対応を具体的に進める絶好の機会になります。

なかでも、再生可能エネルギー導入ビルへの入居は、日々の事業活動における環境負荷を抑えると同時に、ESG対応としての“実効性”を社内外に示す手段としても有効です。

オフィス移転・選定は、実現可能性の高いスタート地点

企業のCO₂排出のうち、特に大きな割合を占めるのが、外部から購入した電力の使用による排出(=Scope2 *²)に分類される領域です。なかでもオフィスビルでは、空調や照明、IT機器の稼働などによって日常的にエネルギーが消費されており、排出量の可視化と削減が課題となっています。

この「Scope2」削減に対する有効な対策として注目されているのが、再生可能エネルギー導入ビルへの入居です。特に移転や契約更新といったタイミングであれば、設備投資を伴わずに切り替えることができ、コストや手間の面でも現実的です。

今後、オフィス選定は経営判断とESG戦略の双方において、実効性の高い施策として重要性を増していくと考えられます。

*² 企業などの組織が外部から購入した電力や熱、蒸気の使用によって間接的に排出される温室効果ガスのこと

環境対応を“証明”できる再生可能エネルギー導入ビルが選ばれる

今後、再生可能エネルギー導入を進めるうえで、企業には“取り組んでいる事実”を対外的にきちんと示すことが求められるようになります。実際に、IR資料への記載をはじめ、取引先からの調査や、採用活動における企業選びでも「環境への具体的な取り組み」がチェックされるケースが増えてきています。

このとき問われるのが、「再生可能エネルギーを公式に導入しているか」「第三者による証明が可能か」といった客観性です。

たとえば、阪急阪神が提供するオフィスビルでは、全7棟で再生可能エネルギー由来の電力を導入しており、RE100の基準にも適合しています。さらに、トラッキング付非化石証書取引結果証明書の写しも提供可能で、企業は入居するだけで環境対応の“証明性”を確保できます。

高層ビルや商業複合施設など8棟の外観写真
画像:阪急阪神ホールディングスグループが提供するオフィスビル一覧

つまり、選んだだけでESG施策に活用できるかどうかが、これからのビル選定の新しい判断基準になってきているのです。

再生可能エネルギー導入ビルへの入居で得られる3つの経営メリット

再生可能エネルギー導入ビル入居で得られる3つの経営メリットを示す図

再生可能エネルギー導入ビルへの入居は、環境対応だけでなく、企業経営にも実質的な効果をもたらします。特に以下の3点は、ESG戦略を具体的に進めたい企業にとって大きなメリットとなります。

① ESG評価・IR資料で活用できる

オフィスで再生可能エネルギーを利用している事実は、ESG対応の実績として、統合報告書やサステナビリティレポートに明記することができます。また、環境に関する明確な取り組みとして、投資家向け説明資料にも記載しやすく、ESGスコアの向上や投資家・金融機関からの信用力アップにも寄与します。

とくに非財務情報の開示が重視されるなか、オフィス選定による再生可能エネルギー利用は、比較的手軽で実績として残しやすい施策といえるでしょう。

② 取引継続・新規取引獲得に有利になる

脱炭素対応は、もはや大企業だけの話ではありません。近年では、グローバル企業や国内の大手企業を中心に、サプライヤー企業に対してもESG対応を求める動きが強まっています。そのため、再生可能エネルギー導入ビルに入居し、エネルギー調達の面で明確な環境配慮を行っていることは、「環境リスクの低い取引先」として有利に働きます。

ESG未対応企業は取引の継続において懸念を持たれるケースもあり、こうした対応の有無が今後の競争力に影響する可能性は高まっています。結果的に、既存顧客との信頼維持や新規案件の受注拡大にもつながるのです。

③ 採用力・ブランド力が向上する

サステナビリティを重視する若手人材が増えるなか、オフィスが再生可能エネルギーに対応していることは、企業の姿勢を“見える形”で示す強いメッセージになります。とくに新卒・若手層は、給与や待遇だけでなく、企業の価値観や社会貢献性にも注目しており、再生可能エネルギーに対応しているオフィスはその意識に応える施策となります。

また、洗練された環境配慮型のオフィスは、企業の先進性や未来志向を象徴するブランディングツールとしても機能します。採用広報や社外向けのPRにおいても、他社との差別化を図る上で有効な要素となるでしょう。

まとめ:オフィス戦略における再生可能エネルギー導入は、企業価値向上の実行策である

再生可能エネルギーの導入(電力調達の脱炭素化)は、経営リスクの低減や資金調達における信頼性の向上、さらには企業ブランドの強化にもつながります。つまり、再生可能エネルギー導入ビルへの入居は、もはや単なる環境配慮ではなく、企業経営に直結する具体的な実行策といえるでしょう。

特にオフィス移転を検討している、あるいは入居ビルの契約更新を迎えている企業にとっては、“ただの場所選び”から一歩踏み込んだ、将来の成長と持続可能性を見据えたオフィス戦略を描くタイミングと言えるでしょう。

阪急阪神グループが展開するオフィスビルでは、2025年現在、全7棟で再生可能エネルギー由来の電力を導入しており、証明書類の提供にも対応しています。環境施策としての効果はもちろん、企業の姿勢を対外的に示す手段としても活用できます。

「どのオフィスビルに入居するか」は、「どんな企業でありたいか」を映す経営判断の一つです。次の移転機会にあわせて、オフィス選定が企業価値にどう影響するかを改めて考えてみてはいかがでしょうか。