CBRE×阪急阪神オフィストレンドセミナー「エンゲージメントを高めるオフィス戦略」を開催
2025年1月31日、CBREとの共催により、大阪梅田ツインタワーズ・サウスにて、「エンゲージメントを高めるオフィスと立地戦略」をテーマにセミナーを開催しました。
昨今、企業の人材獲得が大きな課題となっている中で、オフィスの役割に対する関心はますます高まっており、当日は、多数の企業様にご参加頂きました。
本セミナーではCBREリサーチ ディレクター岩間有史様を講師にお招きし、「エンゲージメントを高めるオフィス」についてお話いただきました。本記事では当日の内容から重要ポイントについて解説します。
エンゲージメントとは
ウイリス・タワーズワトソンによると、エンゲージメントとは「企業が目指す姿や方向性を、従業員が理解・共感し、その達成に向けて自発的に貢献しようという意識を持っていることを指す」とされています。
会社・経営層と従業員の関係性に注目して、エンゲージメントの概念を整理すると、エンゲージメントは会社・経営層と従業員が互いに同じ価値観を理解し、信頼しあうことで双方がつながっている関係と整理されます。類似する概念として、「従業員満足」「モチベーション」等がありますが、「従業員満足」は会社側が従業員の満足度を上げるために福利厚生や労働環境、待遇など諸条件を与えるもので、その主体は会社側にあります。「モチベーション」は従業員個人の意欲のことであり、その主体は従業員側のみにあり、「エンゲージメント」とは会社・経営層と従業員の間の関係性において大きな違いがあることを理解しておく必要があります。

エンゲージメントの効果
エンゲージメントには、業績との比例関係が見られます。ウイリス・タワーズワトソンの調査によると、エンゲージメントが高い会社は、エンゲージメントが低い会社に比べて営業利益成長率が高く、「持続的なエンゲージメントレベルが高い会社」の営業利益成長率は、さらに高いことが示されています。このことは、エンゲージメントの向上が従業員のパフォーマンスや業務効率の向上といった効果を生むことを示していると言えるでしょう。

エンゲージメント向上を目指したオフィス移転の動き
オフィス移転の増加
2024年、大阪市では複数の大型開発が進み、過去最大の8.6万坪の新規供給が見られました。大量供給により、需給バランスの悪化が懸念されましたが、8.1万坪の新規需要が創出され、結果として空室率は前期比で低下し、3.1%となりました。需要がこれほど高まっている理由の一つは、社員のオフィス回帰が進んでいることにあります。2024年7月の一般社員を対象とした調査では、毎日出社する人が60%まで回復しており、オフィスが手狭になった企業の拡張移転が多く見られています。2点目の要因は人手不足にあります。雇用人員判断指数は、バブル期に次ぐ水準になっており、2024年12月時点の失業率は2.5%の歴史的低水準となっています。人手不足の解消の目途はたっておらず、採用を強化するため、通勤利便性の高いオフィスビルに移転する事例が増加しています。3点目の要因は自社ビルからの移転の増加です。大阪は自社ビルの割合が高く、最近では老朽化した自社ビルを売却し、グレードの高い賃貸オフィスビルへ移転する事例が増加しています。
上記のような要因から、オフィスの移転が増加していますが、各企業は、オフィスの移転先を検討する際にどのような事項を重要と考えているのでしょうか。CBREが日本経済新聞社と共同で、経営層に対して実施したアンケート調査の結果によると、快適性、安全性、立地、人材採用時の優位性などの項目が上位となっており、従前と違って、従業員目線でオフィスの移転先を検討する企業が増加している点が注目されます。
オフィスの改変意欲とその理由
現状、オフィスの移転は増加していますが、オフィスの環境整備をコストではなく投資であると考える企業が増加しており、今後もこの傾向は続くものと予測されます。
本アンケート調査の結果によると、今後、オフィス環境改善に対する投資額を「増やす」と回答した企業は40%に達しており、「減らす」と回答した企業(5%)を大きく上回っています。増床やレイアウト変更に対する意欲も高く、オフィス改変のニーズは強まっており、今後も多くの企業がオフィスの改変を検討するものと思われます。
オフィス改変の理由を見てみると、「従業員のエンゲージメント向上」が1位になっており、業容拡大に伴う人員増、働く環境の改善・充実、人材の採用強化・つなぎ止めが続いており、人に関連する項目が続いています。多くの企業が、人材確保を重要な経営課題と認識していることの表れと言えるでしょう。

エンゲージメントを高めるオフィスとは?
エンゲージメント層の働き方
エンゲージメントを高めるオフィスを考えるためには、エンゲージメント層の働き方を知ることが重要です。
前述のアンケート調査によると、エンゲージメント層とエンゲージメントしていない層では、オフィスに行く目的が異なっていることが分かります。エンゲージメント層のオフィスに行く目的の上位は、「社内の対面コミュニケーション・コラボレーションのため」、「業務に集中するため」となっており、経営層が考える「オフィスの役割」と一致しています。
エンゲージメント層のオフィスに行く目的は能動的で、生産性にも強く関連しており、エンゲージメント層は、経営層の考え方について理解・共感し、会社に貢献したいという動機に基づいて出社を決定していると言えるでしょう。

会社のビジョンが具現化されたオフィス
また、エンゲージメント層は、職選びに際して「会社の使命/価値観に共感できること」を重視しており、エンゲージメント向上のためには、会社のビジョンへの共感を高め、浸透を図ることが非常に重要であると考えられます。オフィスは、個人や組織間の連携、従業員の生産性のほか、会社のビジョンへの共感を高め、浸透を図るという点でも重要な役割を担っていると考えられ、会社のビジョンが具現化されたオフィスは、エンゲージメントの向上に欠かせないと言えるでしょう。例えば、目に止まりやすいエントランスや壁などに、会社のアイデンティティが感じられるデザインやメッセージを散りばめることなどは、会社のビジョンの認知度を高め、浸透を促進する効果があると考えられます。
従業員が積極的に関与したCo-designによるオフィス
エンゲージメント層は、自発的な貢献意欲や会社に対する愛着が強く、それゆえ、オフィスにも生産性向上をサポートする働きやすい環境や、愛着を感じられるようなより多くの付加価値を求める傾向が見られます。このため、オフィスの改変(移転、レイアウト変更、リニューアル)において、その利用者である従業員を積極的に関与させることもエンゲージメント向上に寄与すると考えられます。設計する側と利用する側の協働によるCo-Designのオフィスづくりによって、従業員も働く環境を自己決定していると感じることができ、このような過程を経て構築されたオフィスは、従業員の自発的な貢献意欲や会社に対する愛着心をより一層高め、ひいてはエンゲージメント向上にも寄与することになるでしょう。

ステークホルダーの相互理解を助けるオフィス
CBREの実施したアンケート調査によると、オフィスの改変は、エンゲージメントの向上に寄与していることが確認されています。特に、エンゲージメントの向上にインパクトのあった改変は、コミュニケーションスペース、外部からの来訪者と使用する応接スペース、協働スペース、社内カフェ、食堂などの協働・共創スペースの新設・増設となっており、従業員同士だけでなく、顧客、経営層を含めたステークホルダー相互のコミュニケーションを活性化し、相互の理解を深めることを助けるオフィスづくりが重要と言えるでしょう。
梅田の大型オフィスビル・阪急阪神のオフィスの価値とエンゲージメントの向上への貢献
本セミナーでは、続いて、阪急阪神不動産より、「大型オフィスビルにオフィスを構える意味とは」と題して、梅田の大型オフィスビル・阪急阪神のオフィスが提供する価値について説明させていただきました。
続いては、これらの価値がエンゲージメントの向上にどのように貢献できるかを考えてみたいと思います。
梅田の大型オフィスビルが提供する価値
梅田の大型オフィスビルが提供できる1つ目の価値は、その優れた交通アクセスです。7つの駅が存在する梅田エリアは、関西圏のどのエリアからもアクセスしやすい立地です。優れた交通アクセスは、日々の通勤時間や取引先への移動時間の短縮による余剰時間を生み出し、この余剰時間は、新しいものとの出会いや新しいものを生み出す時間へと変化し、従業員のQOL向上へつながっていきます。取引先との行き来も活発となり、またオフィスに立ち寄る社員が増えるなど、社内外の人の交流が飛躍的に促進されるようになるでしょう。
2つ目は、そのランドマーク性です。鉄道の結節点にあり、かつ規模感から生まれるランドマーク性は、社外からの信頼や社員の誇りとなり、今後益々競争が激しくなる人材獲得の面で、円滑な採用や社員の定着に繋がります。
3つ目は、事業を継続し、社員の安全と安心を確保するBCP対応です。BCP対応の充実している梅田の大型ビルは、耐震性能や非常時のエネルギー供給など、グローバルビジネスの拠点として、災害時の事業継続と社員の安全確保を可能にします。
4つ目は、共用施設の充実です。新築の大型ビルでは、カフェやラウンジ、フィットネス、コンビニエンスストア、仮眠室など、オフィスワーカーがオンタイムを自分らしく、快適で能率的に過ごすための様々な共用施設の設置が進んでいます。こうした共用施設は、小さいビルでは提供できませんが、大型ビルでは多くの人がシェアすることで設置が可能になります。大阪梅田ツインタワーズ・サウスでは、入居オフィスワーカー専用フロア「WELLCO(ウェルコ)」を設置し、カフェ、ラウンジ、フィットネス、コンビニエンスストア、仮眠室など、多様な働き方を支援する機能を整えています。カフェでは飲食の持ち込みが可能で、お弁当を持ってくる人も増えています。また、リフレッシュスペースを持っていないテナントのワーカーにも多く利用され、好評です。さらに、同フロア内のラウンジでは、コロナ禍の間にリモートワークが進み、自席を離れて仕事する文化が定着したこともあり、カジュアルな打合せの場として、自分のオフィスの一部として活用されるなど、いろいろな形で利用されています。
これらの梅田の大型オフィスビルが提供する価値には、余剰時間の創出、安全の確保、協働・共創スペースの提供等のエンゲージメントの向上に貢献しうるものも多く含まれており、梅田の大型オフィスビルへの移転を促進する大きな要因になっていると考えられます。
阪急阪神のオフィスが提供する価値
阪急阪神グループは、梅田エリアに多数のビルを展開しており、この強みを活かしたサービスの提供を行っています。
そのうちの1つは、「阪急阪神ワーカーズサービス」です。「阪急阪神ワーカーズサービス」は、阪急阪神のオフィス入居企業約500社・約35,000人を対象としたサービスで、様々な企業の魅力的な人材が、会社の枠を超えた仲間と出会える学びの場やサークル活動など、一人ひとりが輝く機会を提供できるサービスを目指しています。「Biz-tainment~働くを、面白くする!~」をコンセプトとし、いろいろな経験ができるよう、①Well-being(交流)、②Benefit(優待)、③Information(情報発信)の3つのサービスを提供しています。
もう一つのサービスは、阪急阪神の貸会議室やサテライトオフィス「阪急阪神ONS(オンズ)」の優待利用です。阪急阪神は、梅田エリアの利便性の良いビルに貸会議室を5ヶ所展開しており、阪急阪神のオフィスの入居者は割引料金で利用することが可能です。また、阪急阪神が運営しているサテライトオフィスも割引料金で利用いただくことが可能となっています。
これらのサービスは、コミュニケーションの促進、フレキシブルな働き方に対応したサービスであり、エンゲージメントの向上に役立てていただくことができると思います。
まとめ
今後、人口の減少が進む中で、エンゲージメントの向上は、より一層重要になってくると考えられます。オフィス環境がエンゲージメントに与える影響は大きく、エンゲージメントを高めるためのオフィスの改変を続けることは、人的資本の強化に繋がり中長期的な企業価値の向上にも寄与することになるでしょう。