コラム

ABWとは?企業の未来を切り拓く、新しいワークスタイルの真のメリットを解説

近年、ABW(Activity-Based Working)は新しいワークスタイルとして注目を集めており、取り入れる企業も増えています。しかし、ABWは単なる働き方改革のトレンドではなく、組織全体の生産性を向上させるための本質的なフレームワークです。

本記事では、ABWの定義や注目されるようになった背景を解説するとともに、実際にABWを意識して設計されたオフィスの事例もご紹介します。ABWがもたらす真のメリットや導入する意義を理解し、自社に適した働き方を考えるためのヒントを提供します。

ABWとは?

新しいワークスタイル「ABW」を取り入れた大阪梅田ツインタワーズ・サウスの共用スペース「WELLCO」
画像:WELLCO|大阪梅田ツインタワーズ・サウス

ABW(Activity-Based Working)とは、業務内容や気分に応じて働く場所や時間を柔軟に選べるワークスタイルとして広まっています。しかし、これを単なる働き方の一環と捉えるだけでは、その効果を十分に発揮することができません。

ABWを適切に取り入れることで、持続可能な働き方として企業全体に浸透し、より効果的に機能します。まずは、ABWの本質的な定義と注目されるようになった背景について解説していきます。

ABWの定義とその誕生背景

ABWは、オランダのコンサルティング企業であるVeldhoen + Company(ヴェルデホーエン社)が提唱し、主に欧米で広まった働き方の考え方です。従業員や部署ごとの業務内容に合わせて、最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を整えるために生まれました。

Veldhoen + Company(ヴェルデホーエン社)は、ABWを単に「時間や場所を自由に選ぶ働き方」としてではなく、「ワーカーが自律的に働き方をデザインし、自己裁量を最大化するフレームワークかつアプローチ方法」として定義しています。

生産性やクリエイティビティを向上させるために、ワーカー(従業員)が最も力を発揮できる環境を整えることが重要であり、その解決策の一つがABWです。ワークプレイスの役割が変化していく中で、今後のトレンドとして注目されています。

ABWとフリーアドレスの違い

場所を選んで働くという点で、フリーアドレスとABWを混同する人が多いですが、両者には明確な違いがあります。

ABWは、自宅や社外のワークプレイスを含む広義の働き方も含まれており、オフィス内だけに限られません。一方、フリーアドレスはオフィス内で決まった席を持たずに自由に座席を選べるレイアウトや働き方を指します。さらに、両者には導入される目的にも大きな違いがあります。

ABW フリーアドレス
目的 生産性や働きやすさの向上など
従業員が中心の考え方
スペースの効率活用など
企業が中心の考え方
場所 オフィス・自宅・カフェ・サードプレイス・サテライトオフィスなどさまざま オフィスのみ

ABWとフリーアドレスの違い

ABWとしての働き方は広義と狭義に分けられています。広義のABWは自宅や社外など多様な場所を含んだワークスタイルを指し、狭義のABWはオフィス内の環境・仕組みにフォーカスしたワークスタイルを指しています。フリーアドレスはどちらの場合においてもABWを進めていくための一つの手段に過ぎず、働く場所選びだけに焦点を当てたものです。

日本においてABWが注目されるようになった背景

日本でABWが注目されるようになった背景には、企業やビジネス環境の変化とともに、ワークプレイスの見直しが進んできたことが挙げられます。

日本でABWが注目された背景が分かる、ワークプレイスの変遷
情報提供:コクヨ株式会社

長年、ワークプレイスや働き方については、一定の疑問がありながらも、全員出社で同じ場所で仕事をする従来のスタイルに大きな問題は見られず、結果として大きな変革が起こりにくい状況が続いていました。

しかし、コロナ禍によるテレワークの普及が契機となり、多くの企業が新しい働き方を考えるようになりました。

また、テクノロジーの進化も影響し、テレワークやフリーアドレスを取り入れる企業が増加したことも要因と考えられます。実際に、コクヨのオフィスサーベイによる調査結果では、フリーアドレス採用率の割合は、2021年で22.2%だったのに対し、コロナ禍を経た2022年には23.3%と増えていることがわかっています(コクヨ/smart survey 調べ)。

フリーアドレスの採用率も上昇し、日本でも欧米のように柔軟な働き方を導入する企業が増えてきた結果、ABWという考え方が注目されるようになったと考えられます。

ABWを導入することで得られる真のメリットとは?

ABWを取り入れることで、スペースの効率化だけでなく、企業全体の成長を加速させることにもつながる
画像提供:コクヨ株式会社

ABWの本来の定義を理解することで、導入のメリットは単にスペースの効率化や業務効率の向上にとどまらないことに気づいていただけると思います。もちろん、それらも重要なメリットの一部ですが、ABWは企業の働き方を柔軟にし、従業員の主体的な行動を促すことで、企業全体の成長とイノベーションを加速させる可能性があります。この変革は企業側だけでなく、働く人々にも大きな影響を与え、従業員の意識改革にもつながります。

次に、ABWを導入することでどのようなメリットが生まれるのかについて、詳しく見ていきます。

ワークプレイスの多様化が創造性を生む

ABWを導入する大きなメリットの一つは、選択できるワークプレイスが増えることで従業員の創造性が高まる点です。
仕事の内容に応じて、集中作業が求められる時には静かな場所、アイデアを出す際にはオープンスペースやコラボレーションエリアを選ぶことで、自然に思考の切り替えが促されます。

ABWを導入し、従業員が意欲的に業務をする働き方のイメージ
情報提供:コクヨ株式会社

異なる環境での作業は、従業員の拡張的思考と収束的思考を相互に刺激し、今までにないアイデアが生まれやすくなります。さらに、ゾーニング等を工夫することによって、企業側がコミュニケーションや人の流れを意図的に設計することが可能となり、事業成長を促す交流が自然に生まれる仕組みを作り出すことができます。
このように、ABWはワークプレイスを戦略的に整えることで、組織の一体感を生み、企業の成長に寄与することが期待されます。

従業員の主体性を引き出す自由度の向上

ABWの導入により、従業員は働く場所や時間を自ら選択できる自由度が高まります。この自由度が増すことで、従業員が自分自身の働き方を再考し、より主体的に行動する機会が増えるというメリットがあります。
従来のマネジメントは、具体的な指示やタスクの管理が中心でしたが、ABWを導入することで、より大枠での管理が必要になります。これは従業員にとって、自己管理や時間のコントロールを任される場面が増えることを意味します。上司との信頼関係が構築されていれば、従業員はのびのびと働きながらも、責任を持って成果を出すことが期待できます。

ABWは単なる働き方の自由化ではなく、従業員の主体性を引き出し、企業が望む成果を導くための仕組みなのです。

ABWを成功させるための「場・型・技」とは?

ABWを成功させるには、オフィス内装を整えるだけでなく、ルールの設計やや企業文化の醸成も不可欠
画像提供:コクヨ株式会社

ABWを成功させるためには、単にフリーアドレスやリモートワークを導入するだけでは不十分です。必要なのは、適切なワークプレイス(場)、柔軟な働き方の制度・ルール(型)、そしてそれを支えるテクノロジー(技)という3つの要素のバランスです。

これらが一体となることで、ABWの効果が最大限に発揮され、目的を見失わずに成功に導くことができます。次に、この「場・型・技」の3つの土台について詳しく説明します。

ABWを実現するための3つの土台

ABWを成功させるためには、「場」「型」「技」という3つの土台が不可欠です。

授業員が自律的に気付き、行動できるような環境を整えるための3つの土台「場・型・技」
「場・型・技」のイメージ

まず「場」は、従業員が自律的に気付き、行動できるような環境(ワークプレイス)を提供することを指します。ワークプレイスは、企業の文化や働き方に合わせて設計されるべきで、集中スペースやコラボレーションエリアなど、多様なニーズに応える必要があります。また、リラックスできる空間を整えることで、新しいアイデアや創造性が生まれるきっかけを増やすこともできます。

実際に、コクヨのオフィスサーベイによる調査結果では、オフィスや自宅にかかわらず「リラックスしている時」にアイデアが浮かぶと答えた人が多いという結果が出ています(コクヨ/smart survey 調べ)。

次に「型」は、柔軟な働き方に対応したルールや制度の設計を指します。オフィス内外で働くための運用ルールやツールの整備を行い、公平かつ納得感のある仕組みを作ることが求められます。リモートワークやフリーアドレスを導入する場合には、就業規則や業務フローを見直し、スケジュール管理やデバイスの運用ルールを整備する必要があります。

最後に「技」は、テクノロジーの導入と企業文化の醸成を指します。ABWを成功させるためには、適切なテクノロジーの導入が欠かせませんが、同時に企業文化として根付かせることが重要です。導入前には全従業員に目的をしっかり周知し、特にマネージャーやリーダー層に先行して理解を促すことで、変革をスムーズに進められます。事前に課題を洗い出し、解決策を示しておくことも大切です。これにより、ABWは企業全体に浸透し、成功へと導かれます。

ABWの導入事例

ABWを導入したオフィス事例を2つご紹介します。

コクヨのオフィスサーベイによる調査では、今後「テレワーク併用」や「フリーアドレス」を前提にワークスペースを選ぶ企業が増加すると予想されています(コクヨ/smart survey 調べ)。オフィス環境が人材採用や企業成長にどのような影響を与えるか、また、働き方の変化がもたらす影響について検討する際の参考にしていただければと思います。

THE CAMPUS(コクヨ品川オフィス)

ABWを導入したオフィス事例、コクヨ株式会社 品川オフィス「THE CAMPUS」
画像提供:コクヨ株式会社

コクヨ株式会社の品川オフィスである「THE CAMPUS」では、短期的な業務効率だけでなく、学びや経験を通じた成長を目指してオフィスをリニューアルしました。

オフィスエリアは「WORKING」「INNOVATING」「WELL BEING」「LEARNING」の4つの分野で設計され、ABWの考え方をオフィスに取り入れています。各フロアにはそれぞれ異なる目的が設定され、従業員はその時の業務内容に応じた環境を自由に選ぶことができます。

ABWを導入したオフィス事例、コクヨ株式会社 品川オフィス「THE CAMPUS」
画像提供:コクヨ株式会社

大阪梅田ツインタワーズ・サウス

ビル全体でABWを促進する、大阪梅田ツインタワーズ・サウスの共用スペース「WELLCO」
画像:WELLCO|大阪梅田ツインタワーズ・サウス

阪急阪神グループが展開するオフィスビルのひとつである「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」では、ビル全体でABWを促進する環境が整備されています。

ビルの12階に設置されたWELLCO(ウェルコ)は、カフェ、ラウンジ、フィットネス、リフレッシュルームなど、多様な設備を備えた入居企業専用の共用スペースです。集中作業からリフレッシュまで、目的や気分に合わせて自由に使える空間として提供されています。

ビル全体でABWを促進する、大阪梅田ツインタワーズ・サウスの共用スペース「WELLCO」 ビル全体でABWを促進する、大阪梅田ツインタワーズ・サウスの共用スペース「WELLCO」 ビル全体でABWを促進する、大阪梅田ツインタワーズ・サウスの共用スペース「WELLCO」
画像:WELLCO|大阪梅田ツインタワーズ・サウス

また、阪急阪神グループでは広義的なABWを促進するため、阪急阪神沿線で展開するサテライトオフィス「阪急阪神ONS(オンズ)」をはじめ、さまざまな提携施設をご用意しており、これらを活用することで、オフィス外のワークスペースも利用できる柔軟な働き方が可能です。

広義的なABWで活用できるサテライトオフィス「阪急阪神ONS 千里中央店」
画像:阪急阪神ONS 千里中央

ABW導入の意義と今後の展望

ABWの導入は、単なる働き方改革ではなく、企業全体の意識を変革し、効率的で柔軟な働き方を実現するための大切なステップです。これにより、面積削減やコスト削減など、業務効率の向上だけでなく、さまざまなメリットが期待できます。

梅田でのオフィス移転を検討している方は「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」のような、ABWを取り入れたオフィス環境を体験してみることをおすすめします。

阪急阪神ビルマネジメントでは「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」のほかにも、魅力溢れるさまざまなオフィスビルをご提供しております。大阪梅田で「組織全体の生産性をあげる」オフィスビルをお探しの方は、ぜひお問い合わせください。